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台湾青春記

東山彰良(本名・王 震緒、1968-、台湾出身、日本育ち)『流』を読みました。
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物語の舞台は1970~80年代の台湾。
戦後の台湾は、共産党との内戦に敗れ逃れてきた国民党の独裁のもとで経済が発展し、この経済発展がしだいに――歴史というのは皮肉です――それを実現した独裁をうとましく感じはじめ、やがて溶解させていきます。

その画期となったのが1975年の蒋介石の死でしたが、その年、主人公の祖父が誰かによって無残に殺され、その第一発見者が高校生だった主人公でした。
ここから、物語がはじまります。

以下、喧嘩、初恋、ヤクザとのトラブル、受験、陸軍軍学校でのシゴキ、日本への渡航、等々、奔放な青春記がつづき、やがて祖父の死の真実が明らかになり…。

祖父は山東省の出身でしたが、国民党の兵士で、蒋介石とともに台湾に流れてきました。
で、この国民党と共産党の内戦が物語の重要な基調をなすのですが、著者が実際に祖父や周りの年寄たちから聞かされてきた実態は、われわれが歴史の教科書で読んだり、想像したりするもの(「共産主義vs自由主義」の戦争)とはかなり違っていて、非常に興味深かったです。

許二虎は国民党の遊撃隊の隊長で、馬じいさんは共産党だった。
水と油であるはずのこのふたりの縁を取り持ったのが、私の祖父である。
許二虎が共産党に捕まったときに馬じいさんがこっそり逃がしてくれたのは、祖父が裏から手をまわしたためだった。
祖父の時代の侠気は、兄弟分の兄弟分はおれの兄弟分、このひと言に尽きる。
自分のよく知らない男でも、それが兄弟分の信じた男なら、それだけでその男のために一肌脱ぐ立派な理由になった。
……

「わしら下っ端にしてみりゃ、あの戦争はガキの喧嘩みたいだったな」
「まったくだ。右も左もわからんガキが鉄砲持って撃ち合っとっただけだ」
……

僕はまだ台湾には行ったことがありませんが、喜久恵や友人など行ったことがある人たちはみな、絶賛します。
いつかぜひ行ってみたくなりました。(^o^)y

by sam0802 | 2019-12-17 09:51 | 読書・勉強  

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